田舎ヤンサナマズのブログ

Twitter産の田舎鯰が書くアレな話

私は姫である。従者はまだいない2

 このマスターの職業は錬金術士だそうだ。たまの冒険から帰ると終日自室に入ったきりほとんど出てこない。FCのものは大変な勤勉なクラフターだと思っている。当人もよいクラフターであるかのごとく見せている。しかし実際はそれほど勤勉なものではない。私は時々忍び足に彼の書斎を覗いて見るが、彼はよく金策をしているようだ。侍女を呼び出しては売り上げを確認し高らかに笑っている。稼いだ金で大飯を食う。飯を食った後あとで安いエールを飲む。飲んだ後で書物をひろげる。二三ページ読むと眠くなる。涎を本の上へ垂らす。これが彼の毎夜繰り返す日課である。
 私は居候ながら時々考える事がある。金策というものは実に楽なものだ。私もレベルを上げたら錬金術士となるに限る。こんなに寝ていて勤まるものなら私にでも出来ぬ事はないと。それでもマスターに云わせると金策ほどつらいものはないそうで彼はフレンドが来る度に1ギル下げ奴が何とかかんとか不平を鳴らしている。

 がこの家へ住み込んだ当時は、マスター以外のものにははなはだ不人望であった。どこへ行っても跳ね付けられて相手にしてくれなかった。いかに珍重されなかったかは、今日に至るまでコンテンツに誘われないことでも分る。それはまぁ私は突然家に上がりこんで居ついているだけなのだから仕方ない。出来得る限り私を入れてくれたマスターの傍にいる事をつとめた。マスターが金策をするときは必ず横に座る。これはあながちマスターが好きという訳ではないが別にやることもなかったからやむを得んのである。
 しかしこれではただの構ってちゃんである。何か手伝えないかと聞いたところ、いくつかの調理を頼まれた。一番心持の好い事は、後となるがこの頼みは定期的になったことである。この調理はというと"天ぷらの盛り合わせ"で、これを食すと制作意欲を掻き立てるそうだ。問題としてはこの調理の存在がメンバーに見つかり、調理の制作より消費が激しくなり他に手がつかんことである。私はいつでも彼等の中間に己を容るべき余地を見出みいだしてどうにか、こうにか割り込めたのだが、運悪く数人同時に製作を始めると消費が激しく非常に大変である。だがしかし悪いことだとは思わない。ただひとつ、あのオスッテが飯を食べて恋愛脳が再発したのか私に毎朝味噌汁を作ってくれとせがんできたのだけは気に入らなかったのでまた蹴りを入れておいた。君はつがいがいるだろうに。我儘な話である。

 儘で思い出したからちょっとFCマスターがこの我儘で失敗した話をしよう。元来このマスターは金策以外に人に勝ぐれて出来る事もないが、何にでもよく手を出したがる。銃に凝ったり、騎士になってみたり、またあるときはハープなどを鳴らしたりするが、気の毒な事には、どれもこれも物になっておらん。その癖やり出すと胃弱の癖にいやに熱心だ。時にメンバーへ薬湯を作って送ったり、有り余る資金で高価な武具や衣装を買って贈ったりはしているようだが話を聞く前に行動にでておりコミュニケーションに失敗している。このようなマスターがどういう考になったものか私が住み込んでから一月ばかり後のある日に、大きな包みを提さげてあわただしく帰って来た。何を買って来たのかと思うと和洋様々な家具類で、今日から詩や銃をやめてハウジングをすると見えた。果して翌日から当分の間というものは毎日毎日寝もしないで家具を動かしている。
 しかしそのできあがった場を見ると何をイメージしたのやら誰にも鑑定がつかない。当人もあまりうまくないと思ったものか頭を抱えており、ある日帰ってきたメンバーからマスターであるにも関わらず家具の移動権限を剥奪されていた。